教員になった当時は、まだのどかでのんびりとした空気が教育現場でも残っていたように思います。
子どもの在校時間といって、子どもを縛ることもありませんでしたし、逆に放課後、危機管理面から早々に下校させるといった傾向はここ十数年ぐらいのものだと感じています。
教師の側も余裕があり、さようならのあいさつの後、子どもたちと話をするのは私にとってはかなり楽しい時間でした。ただただ子どもの話を聞くのが好きだったんです。
その中でその子どもの生活背景を知ることもありましたし、子どもたちとの絆のようなものもできたと思います。
新採の頃は、校区内に家を借りていました。通学路にあたる道で、登校中ドンドンと扉を叩いて、「先生トイレを貸して!」と入ってくる男の子も。
夏休み中私が不在の間(といっても夏も冬もほとんど実家に帰らずの私でしたが)水かけをしてくれたり、その頃流行りのファミコンを先生にもさせたいと、大勢で押しかけて結局、子どもたち同士でゲームに興じていたり。
1年生を初めて担任したときは、一番遠方から通う子どもと一緒にその子の家まで下校することもありました。長い長い通学路で、道端のゼンマイとワラビの違いもしっかり教えてくれるような子どもでした。
勤務時間の終わる頃、子どもたちが学校へやってきて、「今から釣りに連れてってやっで。」と。すぐ下の漁港まで歩きながら子供が竹を切り出してくれて、私に簡易の竹竿を作ってアラカブ釣りをしたこともあります。
お茶摘みやみかんの袋掛けをそのお宅に行って一緒にやったことも。足手まといのはずだった私に過分なお土産までいただいて、恐縮してしまうこともありました。
スポーツ少年団、と言ってもそのころはソフトボールぐらいでしたが、独り者だった頃は休みの日に応援に行くのも楽しみでした。
何故学校以外の場が好きだったのか。
それはもうもちろん子どもの学校以外の顔を見ることができたからです。
学校ではお勉強もイマイチでそれほど目立たない子どもでも、例えばスポーツ少年団でキラキラと輝いていたり。
親の仕事を手伝いながら、自然と身についたスキルと知識にびっくりしたり。
今はそんな余裕も無くなって、先生方も多面的に子どもを見る時間がなくなりました。本当に残念なことだなと思います。
せめて放課後でもゆっくり子どもと向き合う時間があればいいのに、そんなふうにも思います。ただ、今時間だけ確保されても事務仕事に忙殺されてしまい、子どもとの時間に割り当てることは難しいかもしれません。
実際先生方の多くは、子どもが好きで教員になった方が多いのです。
実際の学校現場のギャップに直面して、ジレンマに悩むたくさんの先生を知っています。
教員という仕事を離れた今でも、何かできることはないか考えてしまいます。

